大切なことは言葉にならない『海獣の子供』ネタバレ【感想レビュー】

巷で話題の「海獣の子供」

圧倒的なビジュアルと難解な内容で賛否両論のこの映画.
観に行くか迷ってる人のために何がそんなにいいのか全力でプレゼンするつもりで描いてみる.

あらすじなんかは公式サイトかどっかで見てほしい.敢えて描くまでもないので.

テーマ:大切なことは言葉にならない

結論から言ってこの映画のとても大きな主張のひとつ

「大切なことは言葉にならない」

これが分かればそれでいいのだ

正直,この映画は話がメチャメチャ複雑だ.ネタバレをしまうと星の誕生の物語のようだ
簡単に言えば,「海」と「空」という星の因子を持った少年たちが,地球から星となって宇宙に旅立つプロセスを描いた話だ.

だけどボンヤリ見てる分にはこんなこと簡単には分かりゃしない.

分かる人には分かるんだろうけどあまりに情報量の多い絵面がずっと続くのでだんだん理解しようとするのに疲れてくる

「画は綺麗だけど,このシーン何が言いたいんだ…」
「気持ち悪い」
「なんでこんな唐突に不気味なシーンが…」


ホント終始こんな感じなので後半はシートにふんぞり反って観ていた.

だけどこの「何これ…」の感覚に陥ること,これがこの映画の主張そのものである.

本当に生々しく,ダイレクトに感じる光景,それは言葉にならないのだ.

・「何その感情論…」と思ったアナタ

ここまでの文章だけ読んでたらそう思うのも当然だ.だけどこの映画,見てもらうと分かる.

言葉ではなく,とことん絵のチカラのみで,生命誕生の神秘を描き切ろうとしているのだ.

海流の表現

魚の大群のド迫力
彼らが時折見せる「未知」の恐怖
主人公たちが見せる生命の探求
その過程に存在する残酷な現実


これら全てが殆どの説明なしにアニメーションだけで表現されるのである.

先ほど述べた「星の誕生の物語」であるということが理解できなかったとしても,この物語が生命誕生のプロセスを描いた物語であることは「感じることはできた」はずである.

(セリフでもある程度補完してたけど.魚や海流は明らかに受精のメタファーだったし)

「感じることができた」.生命の尊さ,命のリレー,大切なことを表現するために敢えてアニメーションで感じてもらう

この作り手の拘りこそがこの作品のテーマ

「大切なことは言葉にならない」

そのものなのである.まさに「考えるな,感じろ」を体現した映画だ.

このテーマ,映像作品そのもののあり方をも表現していると思う.
物語をわざわざ映像に起こす意味,それは映像で感じてもらうためだ

セリフが大事なら小説でも,文章でも,字面で伝わる媒体を使えばいい.でもこれはアニメーションであり,映像作品だ.ビジュアルで伝えるチカラ.それが一番大きくあるべきなのだ.

これから見に行く皆さんは感じながら,もう観た皆さんも感じていたことを思い出しながら余韻に浸ってみることをおススメする.

テーマとリンクする琉花の成長

・琉花と周囲の関係

本作の主人公・琉花はぶっきら棒な少女である.

部活の最中に友達にケガをさせてしまっても,上手く謝り方が分からない.

謝ろうとあれこれ言葉を考えるものの,友達から逃げたい本心から「かくれんぼ」を繰り返してしまう.

また家族とも上手く接することが出来ず,酒浸りの母親,仕事人間の父親とも上手くいかない様子.

玄関のビールの空き缶,靴など,「家の顔」ともいうべき玄関の様子を通してこの家族の不仲がたびたび描かれる.

序盤の音が立たないように空き缶を袋に入れるシーンとかは,何故か心がキュッとなる.

話はそれるが
こういう描写一つ一つが筆者の学生時代を見ているようだった.

どうしても素直になれない10代という時代.そのモヤモヤが全て集約されているようで,もどかしく,そしてどこか懐かしい体験が再び襲ってきたようだった.

・夏の出来事と琉花の成長

ぶっきら棒な少年少女の成長物語,といえば良くある話だが

この映画ではテーマと少女の成長が上手くリンクしている.

再三述べた「大切なことは言葉にならない」だ.



「祭り」に立ち合うことで,命は壮大過ぎる過程と連鎖の中で紡がれているものであることを

そしてすべては海と空からのメッセージであり,決して言葉などでは無く,感じることでしか受け取れないものであることを知る.

物語の最期,二つの重要な描写で,琉花の成長が締めくくられる.

友との和解
命の音

これら二つはどちらも言葉ではなく,琉花が「感じること」で描写されている.

ぶっきら棒だった少女は言葉に頼らず心を通わせ,へその緒を切る音を聴くことで生命の継承を再び目の当たりにする.

主人子・琉花の成長と,作品のテーマ,この二つが完全にリンクしている構造が本当に美しく,また難解だった物語が全て彼女の成長の物語として完結させる作り手側の配慮も見て取れる.

まとめ

原作未読だったり,パンフレット未購入だったりして,話を完璧に理解できていない部分もあるので,まとまりのないレビューだが,

とにかく「大切ことは言葉にならない」これだけが分かればいい映画だと思う.この記事がまとまりがないのも言葉にならないからってことで許して.

あとこの映画を見た後に米津玄氏の公式youtubeチャンネルに上がっている主題歌「海の幽霊」のMVを聞いてみて欲しい.映画を見た後では聞こえ方がマジで違う.

原作ファンの彼が作った曲ということで,映画本編では端折られた「椅子」のエピソードをイメージした曲となっているようだ.

とにかく凄まじい映像体験だった.映画館に足を運ぶ価値のある映画であると思うのでぜひ鑑賞してほしい.

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